よい問いとは   「社会調査法入門」盛山和夫著 より

良い問いとは

よい問いが立てられれば研究は50%完成したようなもの.
しかし,良い問いの作り方のマニュアルは存在しない.

<ひらめきとイメージ>
・基本的にはよい問いはひらめきによってしか生じない
・ひらめきのためには,「どういう問いをたててそれにどう答えるべきか」という問題意識を常に抱いていること
・よい研究をたくさん読むこと.
・「自分もこういう研究をしてみたい」という憧れの対象であるような既存研究に出会うことが重要
・当該テーマの文献をどんどん読んでいくことを通じて,その中から自分の問いが次第に明確な像を結んで来るのを待つのも大切
・ただ,黙って黙って待つのではなく,常に「自分が問うべきことはこの文献の研究ですでに答えられているのか」という問題をもって多くの文献を読まなければいけない.そうすると,そのうちに「既存の研究を読むだけではわからないことがある,それは自分で調査研究をしなければ先へ進めない」という感覚が出てくる
・このように,何か既存の研究ではわかっていないことが存在していることに気づくことができれば,それはよい問いが自分の中に生まれ出たことを意味する

<既存の知識・理論に対する「疑い」>
・よい問いへのひらめきは,既存の知識の中に何か不完全なものがあるという感覚がもとになっているのだが,教科書をはじめとする多くの書物や論文は,それが掲示する知識があたかも完全で欠陥のないものであるかのように装って見せる傾向がある
・しかし,知識や理論というのは,いつの時代でも本当はどこからしら不完全なものである
・よって,創造的な研究は,既存の知識の中に潜在的に隠れている欠陥を発見し,それを修復したり取り除くようなかたちでの(部分的あるいはかなり全面的な)新しい知識を提示することから成り立っている.

<問いの共同体>
・問いのよさのかなりの部分は,その問いが既存の知識や問題関心とどれだけよく関連しているかにかかっている
・その意味で,問いはある種の「学問共同体」や「実務共同体」を前提にしている.
・問いの構造にとってもっとも重要なことは,そうした学問や実務の共同体で共有されている知識や問題関心を修得するとともに,そこにどんな探求課題が存在しているかを考えていくことである.そいった既存の達成地点から出発して,それをどれだけ進展させることができるかという観点から問いを考えていくことが望ましい.

<問いは変化する>
・問いは,研究の出発点で立てられたものがそのままずっと研究の終了時まで普遍に保ち続けられるというものではない.むしろ,研究の実際のプロセスの中でどんどん修正されるべきものである.というのは,研究は常に「やってみなければわからない」という不確実性がつきまとうからである.